2014年9月20日土曜日

◆三浦しをん『まほろ駅前狂想曲』


三浦しをんさんの「まほろ」シリーズ第三弾。
三浦さんはいろいろなジャンルの作品を書いていてどれも好きなのですが、読んでいて「うまいなあ~」とうなってしまうのがこのシリーズです。

良い意味で表現がイカレてる!
作者の筆もノッている気がします。

このシリーズの良いところは魅力的なキャラクター。中でも行天(ギョーテン)春彦の存在がこの作品の要ではないでしょうか。

とにかく、こいつなら何をしてもおかしくない、と読者を思わせることができたことが成功の秘訣。こち亀の両さん的立ち位置をゲットしている。だから、小さい街で起きている話なのに話の振り幅がでかい。当然おもしろいわけです。

行天はとんでもない奴だけれど、心の奥に暗いものを隠していて時折その暗さが出てくる。ただの変人だけではないところにこの作品の深みがあると思います。一緒に住んでいる多田と行天なのに、近寄ってはいけない部分をもっていて、そこを丁寧に描いているのがいい。

今回の作品で行天の暗い過去が少し薄らいだ感じがあるので、行天にとってはすばらしいことですが(もちろん語り手&被害者である多田にとっても)、作品としては峠を越してしまったような感じがして心配です。前作の方が作品としては盛り上がっていたと思います。行天のトラウマに触れた場面では、読んでいるこちらが苦しいくらいでした。
この後も続きがありそうな書き方で終わっているので、三浦さんがどのような続編を書いていくのかが楽しみです。


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